極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
10年ぶりの再会はやはり喧嘩になるのかなと心配したけれど、そうはならなかった。

「クゥーン、クゥーン」
大きな声を出した私の足をタロウが舐めている。

「ごめんごめん、怒ってないからね」
怯えてしまったタロウを抱き上げて、頭をなでた。

もともと捨て犬だったタロウはどうやら以前の飼い主に虐待をされてしたようで、大きな声を出すと怯えてしまう。
それがわかっていて喧嘩をすることはできない。
それに、桃花にも事情がありそうだし。

「駿、女がいるのよ」

え?
「嘘でしょ?」
言いながらもしかしてと思う自分がいる。

「年上の上司なんだけれど」
「上司って、職場の人?」
「そう」

いや、それはまずいでしょう。

「駿か認めているの?」
「ううん」
「じゃあ違うんじゃない?」

さすがに職場で不倫すればすぐにばれるだろうし、見つかればお互いにただじゃすまない。
それが分からないほど駿も馬鹿じゃないでしょう。

「その人、お姉ちゃんに似ているのよ」
「はあ?」

なんかもう、意味が分からない。
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