極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「お前何しているんだ?」
部屋の入口から桃花を睨みつける駿。

「別に」
プイっと顔を背ける桃花。

「黙っていなくなるから、みんな心配している」
「そのうち帰るわ」

「いい加減にしろ。ほら、帰るぞ」
「嫌」

私は廊下から二人のやり取りを見ていた。
なんだかかわいいな。それが正直な感想。
なんだかんだと言いながら、お互いに自分が一番近しい存在なんだとわかっているからこそ言えるわがまま。
遠慮のない関係だからこそ出せる素の姿。

「なあ桃花、お前がそんなに嫌なら先輩の所にはもう行かないから。そんなに怒るなよ」
「別に私はそんなこと」
「言っているだろ。そもそも態度に出ている」
「・・・」
ムスッと桃花が唇を尖らせた。

結局は犬も食わないって言われる夫婦げんか。
桃花だって離婚するほどの気持ちはなかったんだと思う。

「私は子供が生めないのよ」
「そんなのどうでもいいって言ったよな?」
「でも、駿は子供が好きでしょ?」
「ああ。でも、今は桃花で手いっぱいだ」
「はあ?」

「だってそうだろ?すぐ怒るし、わがままだし、それでもっ放っておいたら一人で東京まで逃げてくるんだから、危なっかしくて目が離せないよ」

なるほど、確かにそうね。
なぜか私は一人笑ってしまった。

しかし、
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