極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「ねえ美貴さん、お願いがあるんだ」
しばらくして、不意に太郎さんが口を開いた。

「何?」

この状況でお願いなんて言われれば、あまり良い想像ができない。
おそらく仕事を休みなさいとか、しばらく安静にしていなさいとかそんな話だと思う。
お医者さんである太郎さんにとっては当然の主張だし、私のことを心配して言ってくれているのはわかっている。
でもなぁ、私にだって生活がある。
いくら小さなお店でも経営者としての責任もある。
従業員を使っていればその人たちの事だって考えてあげなくちゃいけない。
簡単に「はい、そうですか」なんて返事ができるわけもない。

真剣な顔をした太郎さんが何を言い出すんだろうとドキドキしながら、私は太郎さんの言葉を待った。
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