極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「ほら、すぐそこだから、もう少し頑張って」

見ると女性は両手に荷物を持っていて、その上小さな赤ちゃんを負ぶっている。
とてもじゃないけれど、男の子を抱っこする余裕はなさそう。

「もー無理」
それでも男の子は座ったまま立ち上げろうとはしない。

これは大変だ。

「敬也が歩かないなら置いて行くわよ」
「ウワァーン」
あーぁ、男の子が泣きだした。

こんな時、私ならどうするだろう。
怒って、怒鳴って、さらに子供を泣かしそう。
私よりもかなり若そうに見えるお母さんがどう対処するのかが気になって、様子を見ていた。

「そんなにイヤイヤ言うなら、パパを呼ぼうか?」
わざとらしく鞄から携帯を取り出すお母さん。

次の瞬間、男の子の表情が変わった。

「ヤダッ」
そう言うと立ち上がり、スタスタと歩き出す。

ははーん、男の子はお父さんが怖いのか。
これがお母さんにとっての天下の宝刀ってわけね。
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