極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
優しい太郎さんんは、今までずっと私が嫌がるようなことは聞かないでいてくれた。

子供の父親のことも、自分が父親だって気づいているはずなのに追及されることはなかった。
太郎さん自身が子供好きなのは敬也君への対応や、そもそも小児科医であることからもわかっている。
自分の子供ができたのに、知らんぷりができる人でもない。
じゃあなぜ何も言わないのか。それはきっと、私が聞かないでってオーラを出しているからだと思う。
その話をするなら私は逃げ出すぞって態度に出していたんだろう。

「どうぞ」
差し出されたのは暖かいココア。

「ありがとう」

甘いものをあまり好まない太郎さんの家にココアがあったとは思えないから、私のために用意してくれたんだろう。

「東京に帰る前に、美貴さんの気持ちを確認しておきたいんだ」
「うん」

きっとそういう話だと思っていた。
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