極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「僕は美貴さんが好きです」
「私も・・・好きです」

そこに認識の違いはない。

「子供も好きです。じゃなきゃ小児科医なんてならなかった」
クスッ。
「そうね、とっても白衣がお似合いです」

「美貴さんの事もお腹の子供も諦める気はありません」
「・・・」

私は、自分や赤ちゃんのために太郎さんの人生が変わることが嫌。
好きな人だからこそ負担にはなりたくない。

「勤務先の病院や父との約束で僕はもうすぐ地元の大学病院へ戻ることになっている。これからは大学病院の勤務をセーブしながら実家を引き継ぐ準備をすることになる」
「うん」

それが本来の太郎さんの居場所だと思う。
お邪魔した太郎さんの実家はとっても大きくて、病院も立派だった。
代々受け継がれた病院は患者さんもたくさんいて、みんなが太郎さんの帰りを待っているように感じた。

「本当は、美貴さんを連れてここに帰りたいと思っていた。だからこそこの街を見てもらいたかった。わがままかもしれないけれど、それが本心だよ」
「太郎さん」
「ずるいだろ、あわよくば『ここが気に入ったから一緒に行くわ』って言ってほしいと思っていた。でも、それではダメだと気が付いたんだ」
「私もいい街だと思ったわ」
でも、ここについて来ることはできない。

「美貴さんが僕の家族や仕事を大切にしてくれるように、僕だって美貴さんから何かを奪うことはしたくない」

やっぱりそういう話になるのか。
予感している展開になりそうで、私は黙り込んでしまった。
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