極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
翌朝。

「ヨイショッ」

久しぶりに大きな荷物を持ったせいか重さを感じる。
キャスター付きのスーツケースだから実際には引いて歩くだけなのに、すごく重たい。
最近はいつも太郎さんが側にいて自分で荷物を運ぶこともなくなっていたから余計にそう感じるのかもしれないけれど、いつの間にか太郎さんのいる生活に慣らされてしまったらしい。

「お世話になりました」
マンションの玄関を出て扉に向かって頭を下げた。

予定通りなら、今日は太郎さんと一緒に東京へ戻る日。
お店はあと2日間休むことになっているけれど太郎さんには仕事もあるし、少し早めに戻って東京でゆっくり過ごすつもりだった。

でも、私は一人で太郎さんのマンションを抜け出す。

朝早いから太郎さんはまだ眠っているけれど、目が覚めたら私がいなくなっているとは思ってもいないだろうな。
こんな形で逃げ出すなんて、私は本当に卑怯者だわ。
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