極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「確かに逃げ出したのは事実だけれど、私だって好きで逃げたわけじゃない」
「だから、その理由を聞いているんだ」

何だろうこの上から目線。
太朗さんってこんな人だっけ?

「逃げたくなければ、逃げなければいい。そこにいてさえくれれば俺が何とでもするって、言ったはずだろ?」
「そんなこと」
できる人間ならもっと楽な生き方ができた。
こんなに不器用に生きてなんていない。

「都合が悪くなると一人で逃げ出すなんて、卑怯なやり方だ」

プチン。
この瞬間、私に中で何かが切れた。

「どうせ私は卑怯ものよ。勝手に逃げ出すずるい人間。それがわかっているんだったら見捨ててくれたらいいじゃない。それに、らしくないって何?いつも強がっていればいいの?私だって泣きたい時はあるわよ」

「だから、俺の胸で泣けって言ってるだろ」

ギュッ。
いきなり歩み寄り、抱きしめられた。

その温かさに抵抗する力も失せて、私は太郎さんに身を預けた。
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