極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
カランカラン。

お店のドアが開く音がして、入り口を見る。

入ってきたのは女性客2人。
旅行客のようで大き目のカバンを持っている。

「こんにちは」
真っすぐにカウンター席までやってきて、座った。

「いらっしゃいませ」
私がお水とメニューを差し出す。


「このフルーツサンドって美味しそうね」
ショートカットの30代後半に見える女性が言い
「そうですね、私もそれにします」
セミロングの女性の方も同意する。

「飲み物はよろしいですか?」
頼みもしないのにすすめてくれる泉美。

「じゃあ、私はホットのカフェオレ」
「私はオレンジジュース」

ん?

カフェオレを頼んだのは30歳くらいに見える女性。
オレンジジュースを頼んだのは年上の女性。

私は見るともなく、オレンジジュースを注文したショートカットの女性の方に視線を移した。

「わかりますか?」
「え?」

一応客商売である以上ぶしつけなほど見つめたつもりは無い。
でも、

「すみません。私も妊婦なので」

不思議なことに、妊娠してから妊婦センサーみたいなものが働く。
外見ではわからないくらいの初期の妊婦さんでも、私は感じ取ってしまう。
だから、

「わからない服を選んだつもりなのになあ」
残念そうな顔をするお客さん。

「すみません」
わざわざ思い出させてしまって、申し訳ない。
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