極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません

思わぬ再会

一夜の出会いを求めて、私は時々飲みに出かける。
結婚願望はないけれど子供は欲しい私にとって、それは人生かけたチャンスの場。子供の父親になってほしいと思える男性がいれば自分から声をかけることだってある。
でも、そんな中で男性と2人になれるほど意気投合することはめったにない。
なんだかんだ言って私は理想が高いし、最後の一歩で押しが弱くて、ことを成就できたことは未だにない。

「美貴は根が真面目なのよ」
「そうかなあ」

先日のワンちゃんと太郎さんとの出会いを説明し、その後は連絡も取り合っていないと話した私に泉美は呆れた顔をした。

「普通、その後の近況やワンちゃんの様子とか連絡をとるネタはいくらでもあるはずでしょう?」
「うん、まあ」
確かにそうなんだけれど。


ワンちゃんを預かってもらった翌日、昼前には太郎さんのマンションに迎えに行った。
お礼に店で扱っているオーガニックの紅茶とベーグルのサンドイッチをお土産にしてウキウキしていたのに、「ごめん、仕事で呼び出されてしまって」と申し訳なさそうに言う太郎さん。
仕事と言われれば何も言えなくて、「私もこの後予定があるので」と嘘をついてマンションを後にした。
それから10日。
太郎さんからは何度かメールをもらったけれど、私から連絡をすることはなかった。
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