極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
学生時代からクラブでバイトをしていた。
多くても週に3日ほどの短時間のものだったけれど、バイト代がいいのが魅力で今のお店を始めるまで10年も続けた。

「久しぶりだなあ、元気だったか?」
「え、ええ」

いきなり目の前に現れたのはバイト時代の常連さんで、確か広告代理店の部長さんだったはず。金払いのいい上得意さんだったけれど女癖が悪いのが欠点で、すぐに体を触ろうとするし、口癖は「ホテルに行こう」だったっけ。
いやだな、あまり会いたくない人だ。

「いい所で会ったな、さあ飲もう」
いつの間にかグラスを持ってきて、近くのテーブルに陣取っている。

「ほら、美貴」

お酒が入っているせいだろうか、私のことをホステスのように扱う男性に本来なら文句を言いたいところだけれど、泉美の連れできている以上ここで騒ぐわけにもいかずに何も言い返せない。
困ったなあ。
少し付き合わないと逃げられそうにない。
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