極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「大丈夫?」
男性と私の間に立った太郎さんが心配そうに声をかける。

「お前はなんだ?」
一方、いい所で邪魔に入られた男性の方はすごみながら太郎さんに詰め寄ろうとしている。

「僕は彼女の連れです」
「連れ?」

不機嫌そうな顔で太郎さんの頭から足元までを見る男性。
途端に表情が変わった。

「来賓の方でしたか」
急に敬語になったと思うと、名刺を出して挨拶をしようとする。

ふふーん。
原因は太郎さんが胸に付けている式典用のリボン。
これをつけているのは来賓客で、かなりのVIPってこと。だから男性の態度が変わったんだ。

「ご挨拶は結構です。僕は父の代わりに出席しただけですので。それより彼女がご迷惑をおかけしたようですね。あとはこちらで引き取りますので」
そう言うと、私の肩を抱いて歩き出した。

後ろから男性の声が聞こえていたけれど一切振り返ることはなく、太郎さんはパーティー会場の外に向かって行った。
< 25 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop