極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
パーティー会場から出てタクシーに乗り込んだ私たち。
恥ずかしいところを太郎さんに見られてしまった私は、一人落ち込んでいた。

「美貴さんは優しすぎるね」
「え?」

「イヤな時は嫌って言わないと」
「はあ」
そういう単純な話ではないんだが。

「ああいう人はおとなしくしていると図に乗るから」
「ええ」
よくわかっています。

「ダメだよ、あんな人について行ったら」
「・・・」

太郎さんは私をいくつだと思っているんだろう。
そんなに世間知らずのおこちゃまに見えるんだろうか。

「いいんですか、来賓なのに勝手に抜け出してしまって」
お説教モードの太郎さんから話の方向を変えたくて、聞いてみた。

「うん、一通り挨拶は終わったから問題ない」
「そうですか」

さっきの様子から私が通りすがりの人に絡まれたんじゃないのはわかっているはず。
横柄な態度や呼び捨てにされていたことからして、私と男性の間に何かあるんだと思うのが自然。
それでも、太郎さんは何も聞いて来ない。
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