極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「ねえ美貴、桃花が徒歩通学するって聞かないのよ」

妹が中学に入学して数か月後、母さんが私にぼやき出した。
少し上目遣いで、意味ありげな視線。

「何で?車で行く約束だったでしょ?」

体が弱く運動も止められている妹の桃花は、両親が車で送迎するのを条件に地元の中学に入学したはず。

「それがね、歩きたいんだって」
「そんなあ、それってわがままじゃないの」

桃花のために母さんは仕事の時間を調整したはずだし、みんなそのつもりで準備してきた。
それを今更・・・

「仕方ないでしょ、あの子だってみんなと同じことがしたいのよ」
「はあ?」

意味が分からない。
都合のいい時は特別扱いされて、都合が悪くなると『みんなと同じことがしたい』なんて自分勝手すぎる。

「しょうがないでしょ、体が弱いんだから」
ああ、いつもの母さんの口癖。

「はいはい。で、どうしたいの?」

実際問題桃花1人で歩いて行くなんて心配。途中で何かあったらどうするのよ。少なくとも慣れるまでは誰かが付き添ってやらないと。

「だから、お願いなんだけれど」
出た、必殺母さんのお願い。

私は身構えて母さんの言葉を待った。
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