極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
数ヶ月後。
我慢の限界を迎えた私は学校帰りの駿を待ち伏せした。

きちんと顔を見て気持ちを確かめよう。そうすればきっと誤解は解ける。
この時のは私は駿のことを疑っていなかった。

あっ。
夕焼けの逆光の中を歩く2人がだんだんと近づいてくる。

駿一人かと思っていたら、桃花も一緒だ。
さすがに、声をかけるべきかどうか一瞬迷う。
でも、その時聞こえてきた声に私は固まった。

「こら桃花、走るなよ」

駆け寄って駿に腕を絡ませようとする桃花に嫌がる様子も見せず身を任せる駿。
嬉しそうに体をすり寄せる桃花が、チラッと私の方を見た。

嘘。
この2人・・・

私はその場に立ち尽くしたまま何も言えなかった。

「お姉ちゃんどうしたの?」

わかっているはずなのに知らないふりで声をかける桃花。
困った表情の駿。
この時、私はすべてを悟った。

きっと桃花は駿が好きで、駿もそのことに気づいている。
その上で桃花を容認しているってことは、完全に私の負け。
私は妹に好きな人を奪われたんだ。


その日以降、私は駿を完全無視した。
何度か母さんたちにばらしてやろうかとも思ったけれど、日に日に元気になっていく桃花を嬉しそうに見ている両親に本当のことは言えなかった。
結局そのまま春を迎え、私は大学入学と同時に東京へやって来た。
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