極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
子供と一緒に来ている分帰る時間を気にする必要のない泉美は、ランチを食べ、紅茶をお替りしてゆっくりと時間を過ごしていた。
それでも夕方になり、そろそろ帰らないとと泉美が腰をあげようとした時、

「あの・・泉美さん」
店番をしながら子供たちの相手をしていてくれた沙月ちゃんが寄ってきた。

「どうしたの?」
「未海ちゃん熱があるみたいです」
「「え?」」
泉美と私の声が重なった。

慌てた泉美が未海ちゃんを抱き上げる。

「やだ、本当だわ」

救急箱から体温計を出して計ってみると、39度を超えている。
それに心なしか元気もなくて、ぐったりした感じ。

「病院へ行った方がいいわ」
「うん」

突然のことに、泉美はオロオロしながらもしっかりと準備を始めている。
時間的にも開業医は閉まる時間。
どうせかかりつけのクリニックに行けないのならと、家には戻らずにこのまま救急を受診するつもりらしい。

「大地君は預かっておこうか?」
2人を連れての受診は大変だと思うから。

「ありがとう、お願いするわ」

このまま泉美が帰ってくるまで大地君は私が見ていてあげよう。
この時の私はそう思っていた。
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