極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「あぁ、来てくれたのねぇ」
泣きはらした顔の未海ちゃんを抱っこして診察室に戻ってきた泉美が、旦那さんを見て表情を明るくする。

「少し仕事を残したけれど、心配で来てしまったよ」
「ありがとう」
すごく嬉しそうに旦那さんに駆け寄る泉美。

事前に泉美から話を聞いていて、その上でさっき携帯の画面を覗き見してしまった私は複雑な思いで二人を見た。

「美貴さん、本当にありがとう。あとは僕が付き添うから」
私が抱いていた大地君に手を伸ばす。

「じゃあ、お願いします」
大地君を渡し、後は帰るだけなんだけれど・・・

きっとこのまま帰ればよかったんだろうと思う。
変な正義感なんか出すから自分が困ることになるってわかっているはずなのに、お節介の虫を押さえることができなかった。

「未海ちゃんもお熱が出て苦しかっただろうと思いますけれど、泉美だって2人分の育児でクタクタなんです。どうか、そのことをわかってください」
「えっ?」
私がいきなりわけのわからないことを言い出したせいで、旦那さんが驚いた声を上げた。

「美貴何言ってるのよ、彼はちゃんと私を大事にしてくれて」
「だったら思っていることを言いなさい。夫婦なんだから、言えなくて泣き寝入りなんておかしいでしょ」
「それは・・・」

「泉美、どういうこと?」

結局私は、完全に場の空気を壊してしまった。
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