極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「すみません、これで失礼します」
支払いも終わりお薬も受け取って帰る準備が整った泉美と旦那さんが、太郎さんのもとに挨拶に来た。

この時点で、太郎さんがあの晩の男性なのは泉美にも伝わっている。
何しろ太郎さんの方から「美貴さんの友人なんです」と名乗って、連絡先の交換までしてしまったんだから。

「お大事にしてください。熱が続くようだったり、変わったことがあれば、遠慮なくご連絡ください」
「ありがとうございます。美貴さんのご友人がお医者さんで助かりました」

さっき修羅場を見たばかりなのに、何もなかったかのように大人な対応の太郎さんと旦那さん。

「美貴、また連絡するからね」
「うん」

最後まで泉美は不機嫌そうな顔。
まあ、私が余計なことを言ったから仕方ないか。
長い付き合いだからこんなことで友人関係が壊れることはないけれど、今日の私の行動はおせっかいだった。
それも太郎さんの前でなんて・・・もう最悪。
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