極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「あの、本当に帰りたいんですが」

かみ合わない会話を続けている私と太郎さん。
何度言っても太郎さんは私の言葉を信じてくれなくて、いい加減疲れてきた。

「体調が悪いんだったね」
「ええ」

少しめまいもしだしたし、今日はタクシーで帰ろう。
この状態で電車に乗ればどこかで倒れそうだもの。
でも、おかしいなあ。いくら疲れたと言ってもめまいまで起きることはなかったのに。さすがに30近くなると、体も弱ってくるのかしら。

「美貴さん、もしかして・・・」
「もしかして?」
続く言葉が分からなくて、聞き返した。

「僕の思い違いならいいんだけれど・・・妊娠してないよね?」

ブッ―。
ゲホゲホ。
飲みかけていたお水を噴出した。

「ごめん、驚かせたね。本当にごめん」
「いえ」
いきなり妊娠なんて言うからびっくりした。

「ただ、若い女性が体調不良と体重減少が続いているって言えば、医者は必ず妊娠を疑う。ましてや君には心当たりがあるはずだしね」

ウッ。
太郎さんて、本当に意地悪。

でも待って、最後に生理がきたのは・・・
< 68 / 199 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop