極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「何かあったらすぐに連絡して」

何とかカフェを出てタクシーで帰ろうとしたのに、結局太郎さんに送られて帰ることになった。
別の意味で後ろめたさを感じている私としては強く抵抗もできなくて、おとなしく送ってもらう。

「それと、連絡したら折り返しが欲しい」
「あ、あぁー」
ずっと無視し続けたものね。

でもな、できれば太郎さんとはこれ以上の接点を持たない方がいい。
この場で「さようなら」ってお別れして、最後にしたいんだけれど。

「まあ住所も聞いたことだし、今度無視すればお店の方に押しかけるけれどね」
「えっ」
それは困る。

「それが嫌なら、連絡をくれること。いいね」
「・・・」

態度の端々に見える上から目線が、小児科の先生だからなのか私に限ったことなのかわからないけれど、嫌な気分でもない。
太郎さんといれば穏やかで幸せな時間が過ごせるんだろうなと思うし、彼になら無条件に甘えられる気もする。
それでも、男の人は変わるから信用してはいけない。
だから、私は一人で生きていくんだ。

「何かあれば連絡します」
曖昧に答えて、私は太郎さんの車を見送った。
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