極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
太郎さんに駿を紹介するつもりなんて全くなかった。
それなのに・・・

「そうですか、県庁にお勤めで」
「はい。美貴の妹の旦那です」
「僕は高城太郎と言います」
「へー、お医者様ですか」
「ええ、まあ」

2人で勝手に名刺交換を始めてしまった。
こうなったら私が口をはさむ余地はなくて、ただ聞き役に徹して2人を見ていた。

太郎さんは何のつもりで駿に話しかけたんだろう。
駿には太郎さんがどんな人に見えているんだろう。
どちらにしても、2人が親しくなるのは歓迎すべきことではない。
困ったなぁ・・・ 

「ねえ駿、時間はいいの?」
いつもは荷物を渡すとすぐに帰って行くくせに。

「ああ、そうだな。急がないと新幹線に間に合わない」
慌てて立ち上がる駿。


「じゃあ、気を付けてね」
「美貴も、体に気を付けて。たまには連絡してやってくれ」
「・・・ぅん」

じゃあなと帰っていく駿を私はただ見送った。
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