極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
このまま太郎さんが地元に帰れば、おそらくもう会うことはないだろう。
そうなれば、子供のことは永遠に知られずにいられるかもしれない。
とってもとっても卑怯なやり方だとは思うけれど、私はそんなことを考えていた。
それに、きっと太郎さんにとってもその方がいい。
もし、まじめで責任感の強い太郎さんに妊娠を告げれば「責任をとって・・」とか「結婚を・・」とか言い出しそうだもの。

「それって卑怯なやり方よ」
「わかってる」

最低なことをしようとしているのも承知の上。
それでも私は子供が欲しいし、だからと言って太郎さんに飛び込んでいくだけの勇気もない。

「ねえ、美貴は彼のことが好きなんじゃないの?」

私の態度があんまり煮え切らないから、泉美が確認するように詰め寄ってくる。

「ぅん・・・嫌いではない」
本当は大好き。

でも、だからって結婚とかは考えられない。
妊娠を盾に、彼の人生を奪う気もない。
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