極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
その後の泉美の行動は、とっても素早かった。

ためらう私に迷う暇など与えず、気が付いたらタクシーを呼ばれていて、お店のエプロンを外しただけの格好で乗せられた。

「ねえ、せめて着替えくらい」
「そんなこと言ってる場合?もし赤ちゃんになにかあったらどうするの?」
「それは、」
そうだけれど・・・

「で、病院はどこ?」

タクシーに乗り込んだものの、行き先を泉美に聞かれて返事に困った。
この状況で、まだ病院に行っていないなんて言えば呆れるよね。
でも、気持ちの整理ができなかったのと、忙しかったので、病院へ行く暇がなかった。
そもそも妊娠は病気ではないんだしと自分に言い訳しながら今日まで来てしまった。

「はあぁー、あんた本当に出産をなめているわね」
冷たく言い放った泉美はその後は私に話しかけることもなく運転手さんに行き先を告げた。
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