極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「はい」
男性医師の返事の後、扉が開かれる。

「ごめんね先生」

えっ。

「あれ高城先生、どうしました?」

いきなり登場したのは、今一番会いたくなかった太郎さん。
白衣を着て、穏やかそうなお医者さんの顔でそこに立っていた。

「彼女知り合いなんだ」
「何だ、そうですか」

厄介な患者を引いたなとでも思っていた救命科の医師は、ホッとしたように表情を緩ませる。

「後は僕が引き受けるよ。診察も僕の方で産科部長に依頼するから」
「部長に依頼するんですか?」
「うん、彼女婦人科は初めてだろうから、女性の医師の方がいいでしょう」

きっと、普段なら救急からの患者をいきなり部長先生が診察するってことはないのかもしれない。
若い救命医の反応からそう感じた。
きっと太郎さんが気を使ってくれたんだろう。

その後、救命医は「後はお願いします」と出ていき、同時に車いすが運び込まれて私が乗せられた。
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