極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
内診室を出て診察室に入ると、先ほど内診をしてくださった50代くらいの女医さんが待っていた。
見ると、名札には『産科部長』の文字。どうやらこの人が部長先生らしい。

「どうぞ、座ってください」

もしかして太郎さんもいるんじゃないかと心配したけれど、診察室には私と女医さんだけ。

「おめでとうございます、妊娠4ヶ月に入ったところですね」
「はい」

わかっていたこととは言え、お医者さんに診断してもらって少しホッとした。

「気にしておられた下腹部の痛みも、今のところ悪い兆候はありません。ただ、」
「ただ?」
先生の言葉が止まったのが怖くて、聞き返した。

「かなり痩せたんじゃありませんか?」
「ああ、はい」

最近は食べられるようになったけれど、なかなか元の体重までは戻らない。

「貧血も出ているようなので、お薬を処方しておきますね」
「ありがとうございます」

その後次の予約をとってもらい、生活の中での注意事項を聞き、診察は終わった。
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