極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「ところで、高城先生とはお知り合いなの?」
「ぇ、ええ」

何とも返事がしにくくて、曖昧に答えた。

「立ち入ったことを聞いてごめんなさいね。私、彼のお父様とは大学の同期なのよ。そのせいもあって昔から太郎君のことはよく知っているんだけれど、こうやって私を呼び出すことって珍しいものだから気になってしまって」
「すみません」

大学病院の部長先生なんてきっとすごく忙しいだろうに、わざわざ呼び出すなんて本当に申し訳ない。

「そんな謝らなくてもいいのよ。どうやら太郎君が勝手にしたことみたいだし、小児科と産科は普段からかかわりが深くて助けられることも多いから、太郎君に頼まれて嫌な顔する人はいないわ」

フーン。
職場でも、太郎さんはいい人なんだ。

もしかして、先生は赤ちゃんのお父さんが太郎さんだと気づいているのかもしれない。何も言われないけれど、そんな気がした。

「次からも私の外来の予約をとったので、必ず来てくださいね」
「はい」

さすがによそに行きますと言い出す勇気がなくて、私は頷いてしまった。
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