極秘懐妊だったのに、一途なドクターの純愛から逃げられません
「お疲れさま、どうだった?」
診察室を出ると、白衣を脱いだ太郎さんが待っていた。

「ええ、まあ」
としか、答えようがない。

お医者様なんだから私のカルテを見ることもできるはずだし、ましてや産科の部長先生とは親しいみたいだから経過を聞くことだって容易いことだろう。
それをしないのが太郎さんらしいとは思うけれど、面と向かって聞かれても答えられない。

「泉美は?」
さっきまでいたはずなのに、姿が見えない。

「先に帰ってもらったよ。お店の戸締りは頼んだから、君はこのまま帰ればいい」
「そう」

お店を空けたまま来たから心配していたけれど、バイトの子もいるからちゃんと戸締りしてくれるでしょう。
なんだか今日は疲れてしまって、すぐにでも横になりたい気分だったから助かった。

「じゃあ、行こうか?」
「え?」
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