迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
第三章
助けた対価の要求(一)
「おいで、こっちだ千夏」
「え、あなたどうして私の名前を」
彼はそれに答えることなく、再び私の手を引き歩き出す。
竹林を抜けるとそこは、よく見た景色だった。
「ここ、家の裏手じゃない」
ちょうど家の裏側にある小さな祠の横に出て来る。
「コンビニまであと少しだったのに、また家に戻って来るなんて」
「おい、気にするところはそこかよ」
やれやれと言わんばかりに、額を押さえながら首を横に振る。
しかしそうは言っても、家を出てから散々歩いて走ったのに、またスタート地点に逆戻りとは。
「でも、どうしてここに」
「ここが俺の家だからだ。ここに道を繋ぐのが一番簡単だからな」
「え、家? この家は、うちの家ですけど」
母屋を指さしながら考える。
こんなイケメンの親戚など、はたしていただろうか。
「こっちだ、こっち」
彼が指したのは、家ではなくこの小さな祠だった。
「……ああ、野宿している人」
「アホか。俺はこの祠に祀られた天狐だ」
「妖怪」
「違うとは言わないが、神獣といえ。その方がカッコいいだろ。最近の奴らはすぐ自分たちと違うものを見ると妖怪やお化けの一括りにしやがる。一応、こっちだっていろいろ区別があるんだぞ」
「へー、なんだか大変ですねー」
「おい、信じていないだろ」
「イエイエ、シンジテマスヨー」