迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
助けた対価の要求(二)
さっき追いかけてきたのが神隠しで、助けたのが狐の妖怪。
いくら季節的にそういう時期だとはいえ、あり得ないだろう。
今まで一度だって、そんなもの見たことないのに。
「まず先に言っておくぞ。今回俺が助けたのはあくまで気まぐれで、助かったのもただの運だ。あの時動けなければ、確実に連れて行かれたんだからな」
「別に恩着せがましく、神様ならいつでもどこでも助けてもらえるはずなんて言いませんし。それより、本当に人ではないの?」
目の色は確かに私たちとは違うと思ったけど、姿形は人そのものだ。
それに神獣と呼ばれる方がカッコいいだろって、なんかあまりにも俗物すぎないだろうか。
「ケモ耳も、もふもふ尻尾もないし」
「あのなぁ、そんなもん出して歩いてたら、フツーに考えておかしいだろう。どんな世界だよ」
「いやいや、神獣さまにどんな世界だよとか、ツッコまれたくはありませんから」
「いいか、まずこっち側と向こう側っていうのは、隔てた薄い膜が張られただけの平行世界のようなもんだ。薄い膜を破って出てくることもあれば、入ってしまうこともある。ほらよく、深淵を覗く時、深淵もまたって言うだろう?」
「でも私、見ようなんて思ったこと一度もないですけど」
関わったところで一文の得にもならないことは、遠慮したい。
さっきみたいに追いかけらるのはもう嫌だ。
見なくて済むのなら、一生見たくはない。
お化け屋敷だって、しばらく入れる自信はない。