迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
助けた対価の要求(六)
「神様、サイテー。ないわ」
「なんだよ、せっかく助けてやったのにそれはないだろう。じゃ、最大限に譲って、パンツくれ」
「うわ、もうありえない。俗物だ、俗物」
「そんな難しい言葉出してくるんじゃねーよ。パンツでいいって言ってるんだ。あ、おい、ちゃんと明日の朝までには供えておけよ。七代祟るぞ」
彼の言葉を無視し、母屋へと歩き出す。
助けた神様が祟るって……。本末転倒だな。
「おい、千夏きーてるのか? 無視するんじゃない。物が嫌なら、軽いキスとかでも」
「まだ言うか……」
ダメだ、この神様だか神獣だか。頭の中がエロくて残念過ぎる。
「ねぇ、そういえば名前聞くの忘れてた。なんて言うの?」
「ん、ああ……シンと呼んでくれ」
私が振り返ると、やや考えたように彼は答える。
ああまただ、あのなにかもの悲しそうな瞳。
どうしてそんな目で私を見るのだろうか。
「ねえ、もしかして、どこかで……」
「パンツは明日の朝までだからな。過ぎたら違うもの貰いに行くからな」
「うわ、変態」
ドラマチックな想像をした自分を返して欲しい。
ただ少しだけ先ほどまでの怖かった気持ちが薄れたということは絶対に言わない。
「またね、シン」
午後の山風が強く吹いたかと思うと、もうそこにシンと名乗った神獣の姿はなかった。
私は歩き出す。
深淵など覗くものかと誓いながら。
「……おばあちゃんのパンツでも、ありよね。どうせ、パンツはパンツだし」