迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
第四章
それはどこまでも追いかけて(一)
夜眠りにつくとあの日を再現するかのように、またあの場所に戻ってくる。
もうこの夢を見るようになってから、すでに三日目だ。
動かない足。
そして流れる脂汗。
嫌だ嫌だと心の中で何度か叫び、ようやく足が動き出す。
しかしあの日のように手を繋ぎ走ってくれていたシンの姿はない。
そして後ろから近づいてくる鈴の音との距離も、日を追うごとに近づいている気がする。
「もう、なんで目が覚めないのよ」
これが夢だという自覚はある。
しかし体と夢を見ている頭とは切り離されているため、もちろん起きることは出来ない。
「夢なら、びゅーんって、飛べないわけ?」
私の叫びだけが、誰もいない空間に響き渡る。
ジメジメとした生暖かい風がまとわりつき急ごうとすればするほど、足がもつれた。
鈴の音はもうすぐ後ろだ。
いっそ振り向いて、持っているカバンで殴れないだろうか。
そう考えてカバンに手をやり、シンの言葉を思い出す。
顔を見たら帰れなくなる。
ただの夢だとしても、それは御免だ。
「もう、いい加減にして!」
自分の大きな叫び声で、私は目を覚ました。
自分でも驚くほど汗をかいているのがわかる。
今日はあと数歩までの距離に、あの神隠しがいた。
明日になれば捕まるかもしれない。
そう考えるだけで頭が痛くなる。
天井を見上げると、その木目すらどこかに怪異がいるのではないかと思えるほどだ。