迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
それはどこまでも追いかけて(二)
「朝になったら、とにかく行ってみよう」
私はシンの顔を思いだしつつ、もう一度眠りについた。
残暑と呼ぶにはまだ早く、まだ九時を回ったばかりだというのにすでに日差しは強い。
いろいろなお供えを両手いっぱいに持ち、私はシンがいると言っていた小さな祠へ向かった。
家から数分の距離とはいえ背の高い青々とした竹が密集し、先ほどまでの日差しが嘘のようにさえ思える。
この前シンといた時には気づかなかったが、ここだけ空気が違うようにすら思えた。
「ん-」
お酒に油揚げ、ジュースにおつまみ。
何がいいのか分からず、とりあえずその小さな祠に少しずつ供える。
そして誰もいないのに叫ぶのもおかしいと思い、その場にしゃがみ込み、手を合わせる。
心の中でシンの名前を呼び、どうか出てきてくれないかと願った。
しかしどれだけ待っても、何も状況は変わらない。
「っていうか、深淵をのぞく時、また深淵もっていうなら、見てるんじゃないの?」
だとすれば、なぜ出て来ないのか。
幾度も助けようと思わないということか、それともお供えもの自体が気に食わないのか。