迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
本家からの招集(二)
「……仕方ないだろう」
「だからって、そんな風にゴロゴロしていてどうするっていうのよ。田舎に来るっていうだけで、お母さんには捨てられるし、こっちでなんて仕事もないのにどうして来たのよ」
祖母の具合が悪いというなら、まだ話は分かる。
しかし祖母は今年七十五にして、みかん農家のまだまだ現役だ。
「仕方がないだろ……」
「だから、なにが仕方ないって言うの? ちゃんと私が納得できるように説明して」
「千夏ちゃん、そうお父さんを責めるもんじゃないよ。お母さんが来てくれなかったことは悲しいことだけど、本家に呼ばれた以上、分家の人間は従うしかないのだよ」
麦茶をお盆に乗せた祖母が、台所から出てきた。
グラスには水滴が滴り、カランという氷の音が聞こえる。
本家と分家。
田舎ならではかもしれないが、代々長男が継ぐ本家とそれ以外の人間が継ぐ分家がある。
うちはこの町の半数近くがこれに当たる。
分家によっては名字が変わってしまったところもあるのだが、一族だらけの町だ。
「今どき、本家とか分家なんてそんなの意味あるの?」
「そんなこと言ったら、罰があたるよ。我が関家は、とても由緒正しいお家柄なんだよ」