迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
第五章
対価は添い寝(一)
「あの後の夜から、神隠しに追いかけられる夢を毎晩見るの。初めは、トラウマか何かになって見ているのかなと思っていたんだけど、日を追うごとに神隠しとの距離が近づいてきてる気がして」
「あの日からすぐってことは、今日で三日目か」
「うん」
昨夜はもう、手を伸ばせば届いてしまうのではないかというくらいの距離にまで神隠しの気配を感じた。
もし今日また眠ってしまったら、今度こそは捕まってしまうかもしれない。
夢だと思いつつも、夢だとは到底思えないような怖さがそこにはある。
「千夏、神隠しの顔は見たか?」
「振り返ってないから、見てないよ。ねえシン、でもこれって、夢なんじゃ……」
「夢だと思えなかったから、わざわざこれを用意したんだろ」
シンが供えてあった本を懐にしまう。
そうだ、夢とは思えないからこそ本を買いに行ったのだ。
ただ懐にしまうあたりがなんとも言えない光景ではあるが、今はツッコむのはやめておこう。
「そうだけど」
ただそれを認めてしまえば、曖昧だった恐怖が現実味を持つ。
それが嫌だったのだ。
夢だと思い込めば、どれだけ怖くてもなんとかできると思えた。
しかしあれが夢ではなく本物の神隠しというのなら、私だけでは対処のしようがない。