迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
常日頃からの行動は(三)
―リン…………リン……リン
鈴の音だけが不気味に辺りを支配する。
下がろうにも後ろにいるシンは私の後ろにぴったりくっついたまま、なぜか動こうとはしない。
シンと声をかけたくても喉の奥がヒューという音を立てるだけで、声が出てこなかった。
手を伸ばせば届く位置で神隠しは立ち止まると、下から私の顔を覗き込む。
「いやだ」
声と共に、足が出た。
そう、とっさの時に出る行動は日頃から行っているものがどうしても多い。
私の場合、最近よくシンを蹴っていたせいだろうか。
恐怖よりも気持ち悪さから、思わず神隠しを蹴り飛ばしてしまったのだ。
綺麗に弧を描きながら、神隠しが吹き飛んでいく。
「くくくくく、さすがだな。本当に怪異を蹴り飛ばすなんて。術者でも、そんな力業しねーよ」
「いや、知らないし。そんなこと言ったって、じゃあ、どうすればよかったって言うのよ」
正解など分かるわけがないだろう。
こんなものに追われたのも、抵抗するのも全てが初めてなのだから。
でも冷静に考えれば、確かに足蹴りする人はそうそういないかもしれない。
「ま、これはこれで正解だな。ほら見てみろよ」