迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
常日頃からの行動は(四)
視線をシンから神隠しに戻す。
吹き飛んだ神隠しはまるで人と同じようにまず上半身を起こし、地面に手を付くと立ち上がった。
「ひっ」
起き上がりこちらを睨みつける神隠しを見た私は短い悲鳴を上げた。
神隠しの顔は先ほどまでの人形の顔などではなく、まるで人間の顔の皮がはがれ落ちてしまったように肉が見えている。
その生々しさは、先ほどの気持ち悪さなど消し去るほどの恐怖だった。
「シン、シン」
後ずさりの出来ない私は後ろへ必死に手を伸ばし、シンをつかもうとする。
「こらこら、暴れるな」
シンは落ち着かせるように片手で私を抱くと、もう片方の手を神隠しのいる方へ伸ばす。
「……」
シンが口の中で、素早く言葉を紡いだ。
すると伸ばした手から、薄い光が神隠しへと走る。
そして次の瞬間、神隠しを包む火柱が上がる。
「きゃあ」
「大丈夫だ。あの炎は怪異にしか効かない」
パチパチとまるで木が焼けるような音と、それに似つかわしくない肉の焼けるような匂いが広がっていく。
「ねえ、もしかして神隠しって」
炎の中に、神隠しの顔を見た気がした。
先ほどの恐ろしい顔ではなく、本当に小さな子どものような顔を。
その顔は自分が消えるというのに、炎に包まれながらも微笑んでいるように見えた。