迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
動かない自転車(三)
「重たいし、暑いし、最悪だ。今日はとことんついていない」
買ったものは自転車のかごに入れているものの、重さは大して変わらないので意味はない。
ようやく家までの坂を登る手前にある交差点に着いた時には、もう体力を使い果たしていた。
「はぁはぁはぁ、あと少し」
信号が赤から青に変わる。
歩行者のために、音楽が鳴り始めた。
『通りゃんせ』
この音を聞くたびに胸が苦しくなるような、なにかを思い出さなければいけないような、そんな気持ちになる。
「……いけない、信号かわっちゃう」
じっと眺めていた信号が点滅を始めたため、急いで自転車を押し始める。
ちょうど歩道の中ほどまで差しかった辺りでだろうか。
急にドスンと誰かが後ろのチャイルドシートへ乗ったような感覚があった後、自転車が動かなくなった。
「な、なに」
力をいくら入れても、自転車は全く動かない。
焦れば焦るほどに、時間だけが過ぎていく。