迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
第十二章
地に残る未練(一)
あれからどれぐらい泣いていたのだろうか。
私からすれば数分のことも、もしかしたらもっとだったのかもしれない。
それでもシンは何一つ文句を言わず、ただ側にいてくれた。
「……ごめんね……ありがとう」
「んぁ? ああ。ちっとは落ち着いたか?」
シンの言葉に、私は少しぎこちなく視線を合わせた。
こんな近い距離で、しかもすがり付いていたなんて。
今更ながらに恥ずかしさが、込み上げてくる。
「うん。シンのおかげで、少し落ち着いたよ」
「それならいいんだが……。すんごい、不細工な顔になってるぞ?」
考えるよりも先に足が出る。
「な、だ、だからいってーって」
蹴られた脛を押さえ、シンがびょんびょんとその場で跳び跳ねていた。
先ほどの、嬉しくて照れくさい気持ちを返して欲しいものである。
言われなくとも、散々泣いた顔が酷いだろうことなど分かっている。
それをいちいち口に出した当然の報いだ。