迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
地に残る未練(二)
「一言多い」
「せっかく助けてやったのに、それはないだろう」
「せっかく格好よく助けてくれたのに、台無しです」
「あ、いや……それは悪かった」
「分かればよろしい」
「以後気をつけます? あん? なんかおかしくないか、これ」
それでも素直に謝ってくれたシンに、思わず私は吹き出す。
シンもやや膨れながらも、つられて笑い出した。
「なんで自転車が動かなかったの?」
「んなもん、余計なものを拾ってくるからだろ」
シンの言う、余計なものとはなんのことだろうか。
私が自転車を見渡しても、特に異常は見当たらない。
「なんにも、ないみたいだけど」
「はぁ。これだから無自覚のやつは困る」
シンはやれやれと言わんばかりだ。
そんなことを言われても、元からなんの力もないのだから。
そう考えて、一度止まる。
それでも長は私には力があると言っていた。
もし自分の中で、それを見ないようにしているとしたら。
自分の強い意思ならば、逆も出来るのかもしれないと。
「無自覚なのかな。でも、無自覚ってことは自覚さえすれば、どうにかなるの?」
「それは、俺が出す答えではないだろ」
そうだ。
そんなところまで、シンを頼るわけにはいかない。
これは自分自身のことなのだから。