迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
地に残る未練(四)
「あー。ちょうどいいもの、みーつけた。ねぇシン、悪いんだけどこのまま自転車押して?」
「さっきだって助けてやったのに、まだかよ。ちゃんと対価払えよ、対価」
そのまで言われて思い出す。
シンへの対価が違う意味で高額だということを。
この前の頑張って買いに行ったエロ本はもう渡してしまった。
今、家に渡せそうなものはなにもない。
とは言っても、この自転車は私では重すぎて動かすことが出来ないのだ。
「それは、わかってるけど」
「けど?」
シンがニタニタした顔で私を覗き込む。
なんだか、まるで弱みを握られた気分だ。
「んーっと、えっと……。本?」
「さっきからずっとだからなぁ、さすがにこの前みたいなっていうのもな。ベロチューなら一回で済むんだが?」
「し、しないわよ。絶対無理」
「なんだ、キスしたことないのか」
「あ、あるわけないでしょ」
「ふーん」
今まで彼氏すらいたことがないのに、キスなどしたことがあるわけがない。
大体シンとは付き合っているわけでもないのに、いくら対価だとはいえそんなものは払うわけがないだろう。
あまりに違和感がないから、すぐに忘れてしまうことがある。
シンは人の姿かたちをしているものの、人ではない。
もしかすると、この感覚の違いはそこから来るのだろうか。