迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
地に残る未練(五)
「ファーストキスは高そうだなぁ。ん-、今回はコスプレで我慢してやるよ」
「は? コスプレ?」
前言を撤回したい。
人だからとか神獣だからとかではなく、純粋にエロイだけだ。
「そうそう。昔手に入れたメイド服があるんだ。あれ着て、お茶でも煎れてくれよ」
メイド服でお茶。
その示された対価が高いのか、安いのか全く分からない。
ただキスよりは安く、バイトだと思えばなんとかなりそうだ。
「わ、分かったわ。これが終わったらメイド服でお茶煎れるから、とにかく自転車頼むわ。あの道祖神があるところまで」
私は道と道の隙間から見える道祖神を指さした。
「ああ、お安い御用だ」
シンは上機嫌で自転車を押し始める。
その様子を見つめながら、やはり選択を間違えたような気がしてきた。
私は目的地である道祖神の前で自転車を止めてもらい声をかけた。
「さっきぶりです」
「また、お前さんか。全く、物騒なのまで連れてきおって」
道祖神は動くわけでもなく、やや険しい表情でシンと自転車を見つめていた。
物騒なのとは、どちらを指しているのだろうか。
シンを見上げたが、いつもと変わらない表情からは何も読み取ることは出来なかった。