迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
地に残る未練(六)
「んと、こちらはシンです。で、自転車になにか乗られてしまって」
「ああ、その子を拾ってきたんかね。まったく、ちゃんと見分けるようにと言っておいた矢先に」
「はぁそうなんですが、なにせ何かが乗っているというところまでしか私には分からなくて」
力が足りないのか、経験が足りないのかはまだ今は分からない。
しかし、もしやれることがあるのならばなにかしたいとは思う。
長になりたいのではなく、そう、ただ純粋に。
「だからお願い、この子がなにか教えて欲しいの」
「……去年その交差点で亡くなった子どもさね。母親の自転車と間違えて乗ってしまったんだろう。毎日、母親の自転車で制服を着て乗っていたからよく覚えているよ」
制服を着た子どもが母親の自転車に乗って事故にあって亡くなった。
この先には保育園がある。
おそらくその保育園に通う途中での事故だったのだろう。
「大変だったね、悲しかったね。ママじゃなくて、ごめんね」
無意識のうちに、言葉がこぼれ落ちていた。
きっとこの子は、母親を待っていたはずなのに。
それなのに間違えて私の自転車へ乗ってしまった。
だからあそこに留まりたくて、自転車を動かないようにしていたのかもしれない。
「ねぇ、お姉ちゃんがあなたをママのとこまで運んであげる。それじゃ、ダメかな」
「おい」
そう言って私の腕を急につかんだシンの顔は、いつになく怒っていた。