迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
神隠しは怪異の始まり(二)
嫌な汗が背中を伝う。
静かな町の中と比例するように、心臓の音がうるさい。
気のせいだ。
そう自分に言い聞かせても、まるで張り付いたように足が動かない。
ちょうど金縛りというのは、こういうことをいうのだろか。
しかし金縛りとは寝ている時に起きる、脳の伝達障害だとこの前テレビでやっていたっけ。
今はもちろん寝てなどいない。それならばなぜ、動けないのか。
「……」
なんなのよと言いかけて、声すら出ないことに気付く。
生温かい風がただ体にまとわりつき、不快以外のなにものでもない。
しかしそんな静寂を破るかのように、どこか遠くから鈴の音が聞こえてくる。
微かに聞こえるその音は、よく耳を澄ませると私のちょうど後ろの道からゆっくり近づいてきている。
どう頑張っても、いい予感はしない。
私がなにをしたというのだろう。
こみ上げてきたのは恐怖ではなく、怒りだった。
自分の思い通りにならない体、そしてそれ以上に思いに対して。
「だー、もういい加減にしてよね」
そう言い終えたところでふと体が軽くなり、前につんのめる。