迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
地に残る未練(十一)
キョロキョロと辺りを見回すと、横断歩道の向こう側に石で出来た鳥居が見えた。
この町唯一の人が管理している神社であり、確かうちの一族が神主だったはず。
「同じ一族だし、あそこなら借りられるわね」
一族の顔などほとんど覚えてはいないが、名乗れば大丈夫だろう。
そう、たかを括る。
「地図借りてくるから、ここで少し待っていて」
日はすでに傾きはじめている。
今の時期いくら日中が長いとはいえ、暗くなってから見知らぬ人の家を訪ねるわけにもいかない。
そうなると、あと一時間くらいしか時間はないだろう。
私は自転車をそのままシンにお願いすると、急いで神社へ向かい走り出した。
大きな石の鳥居をくぐり、石畳をかけ上げる。
運動不足なだけあって、汗が額から流れ落ち、息が上がる。
しかしそれを気にする時間などない。
「すみませーん」
社務所は自宅と兼ねているらしく、玄関先で私は声を上げた。
呼び鈴すらない昔ながらの横開きの玄関は、施錠すらなく開く。
その先には長く、先の見えない薄暗い廊下が続いていた。