迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
交差する想い(六)
「あの、うちに……なにかご用でしょうか」
「あ、すみません。あの、怪しい者ではないのですが」
着いたら何を言おうかなどと考えていなかった私の返答は、明らかに怪しい者だろう。
自分の口から出た言葉に、自分自身が苦笑いする。
「違うんです。あの、自転車に」
彼女は私の言葉で、戒の押す自転車に視線を移す。
しかし自転車を見た彼女は、その表情を大きく歪ませた。
悲しみではなく、それは怒り。
何よりも憎いものを見るような目付きに、一瞬言葉を失くす。
「あの事故のことを知っていて、あなたたちはそんなものを持ってきたのね。なんだって言うのよ。わたしが悪いとでも言うの!」
「ち、違うんです。落ち着いて下さい。私はただ……」
「やっと少しずつ忘れようとしていたのに。そうやって、またわたしを責めるのね。こんな田舎なんて、大嫌いよ。事故だって、わたしのせいではないのに。ことあるごとに、わたしのせいだと」