迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
第十五章
本当の願い(一)
言い終えぬ間に、風に逆らいながら進み始める。
風は彼女の拒絶の表現のように思えた。
台風の目のように、中心に近づけば近づくほどその風の威力は大きい。
前のめりになりながら、視野を確保するために顔に手を当て一歩ずつ進んでいく。
しかしどれだけ体重を乗せても、数メートルの距離が縮められない。
「さなちゃん、話を聞いて。お母さんは別にあなたのことを忘れたとか、そんなわけでなはいのよ」
「……」
「ケガするぞ。説得なんて、もう諦めろ!」
「絶対にいや。私はしたことだもん。最後まで、もうどうにもならないとこまで、まだやってない」
シンの言葉が私を思ってのことだということは痛いほどわかっている。
でもこれを、さなちゃんと約束をしたのが私である以上、辞めるわけにはいかない。
ゆっくり、かき分けるように進む。
そして全体重をかけたまま、自転車に手を伸ばす。
手がやっとの思いで自転車のハンドルまで届く。
「うわっぁぁ」