迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
神隠しは怪異の始まり(四)
ただ今手を引いて走っているのも、ある意味おかしなことだ。
だって私はこの人のことを全く知らないのに、後ろの鈴の音よりマシだと思えてしまうのだから。
「おいおい、ちゃんと走れ」
「そう言ったって、出口すら見えないのに全力疾走しているんですよ。女子高生なめないで下さい。もう体力限界です」
「最近の奴は弱っちいな。そんなことで、どーすんだよ。出口はないわけではないんだ。あいつらの気をお前から逸らせればなんとかなるんだが」
「逸らすっていったって」
「人形ひとがたとか持ってないのか?」
ひとがたとはなんのことだろうか。
よく漫画とかに出てくる紙で出来た人の形をしたやつのことだろうか。
「いやいや、普通にそんなもの持っているわけないじゃないですか」
「今どきのジョシコーセーというのは持ってないのか」
「持っていません。携帯にマスコットなら付いていますけど」
カバンに付いたお土産でもらったマスコットを掲げて見せる。
するとその男の人が振り返り私を見た。
灰色のやや長い髪に、瞳の色も同色だ。
外国人さんなのだろうか。
それにしては日本語が上手だけど。
「それでいい」
反対の手を差し出す彼にマスコットを手渡す。
「痛い」
「悪いな」
マスコットを受け取るだけだと思ったその手が、器用に私の髪を一本引き抜く。
彼は私の引き抜いたその髪をマスコットの首元に引っ掛けると、立ち止まり、塀の奥へ投げ捨てた。
「マスコット」
「静かに」