迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
本当の願い(三)
「さなちゃんは自転車が好きだった。お母さんの背中と早く動く景色。そんな全てが詰まったこの自転車の後ろが。だから私の自転車に間違って乗ってしまったんじゃないかって思うの。だからね、私思ったの。さなちゃんがもういいよって思えるまで。いつか天に昇りたいって思えるまで……私が乗せてこぎ続けるから」
「おい。だからそんな安易な約束をするなって何度言うんだ」
「でもねシン、私にはこれが正解な気がするんだもの。安易じゃないよ? 初めにした約束の続きだもの」
「だからってそれが本当に正解だとも限らなければ、いつまでもその約束を守ることも無理だろう」
「無理無理っていうけど、無理って思うほど何もしてないじゃない。それに約束は最後まできちんと守るものでしょ」
「……守るもの……」
弱まる風を背に、くるくると自転車で辺りを回る。
さなちゃんがずっと見てきた景色。
片田舎にしかすぎず川と空き地ばかりの道だが、家へと続く道。
保育園までの行き来を、きっとお母さんと毎日見て来た道だ。
あの交差点で動けなくなってただ過行く人と車を見つめるだけの日々ではなく、楽しかった過去と同じ風景を見ることが出来ているはず。