迷信を守らず怪異に遭遇し、必死に抵抗していたら自称お狐様に助けてもらえました。しかし払う対価が、ややエロい件についてはどうすればいいのでしょう。
第十六章
得体のしれない恐怖(一)
まばらな街灯がうっすらと辺りを照らし始めた。
明るい道にはほど遠く、交差点から交差点までの角に一つずつしかない。
一人歩きなどしたいとは思えないほど暗く、そして人影もない。
夜中でも人が溢れる都会とは大違いだ。
「二人とも帰るよー」
「まったくこっちの気も知らないで元気な奴だな」
「主なら、どうにかしろよ」
「俺と千夏とは、そういう関係ではない」
「そうか……。あんたにその気はなくても、長は十分にその気だったけどな」
私の自転車の後ろを、シンと戒が歩く。
なにかをけん制するように、お互い表情は硬い。
私も戒と仲がいいわけじゃないけど、シンと戒はそれ以上ね。
こういう光景を見ると、シンは誰にでも優しいってわけじゃないって分かる。
でもこの話が出ているちょうどいい機会ね。ちゃんと戒に伝えないと。
自転車をこぐのをやめ、私は戒たちの方へ振り返った。