淋しがりやの足跡
私と史郎さんの交換ノート。
史郎さんは私から書いてほしいって言ったけれど。
言い出しっぺからでしょ、なんて言って、私はノートを置いて帰ってきた。
(今頃史郎さん、何か書いてくれているのかしら)
ーーーその夜。
夢を見たのは、史郎さんがプロポーズしてくれた日のことだった。
私は20歳で。
父の時計店を手伝っていて。
店にまだ若い史郎さんが、壊れた腕時計を持ってきて。
私達は知り合うことになった。
そして一緒に出かけるようになって。
恋人として史郎さんの隣で歩くようになった。
あの日も私は早起きして史郎さんにお弁当を作って、お花見のデートに出かけた。
桜の木の下で、お弁当の中にある卵焼きを頬張った史郎さんが言ったの。
『これからもずっと、この卵焼きを食べたいんだけど、僕と一緒になってくれませんか?』
内心ヒヤヒヤしたのを覚えている。